「ウィンドウズ・ウィドウ」

 僕がネットに潜って4時間。時刻は午前3時を回っていた。
 掲示板を五つ、ネットゲームを一ラウンド、そしてチャットを一、
二個所回るのが僕の日課だ。
「ここ読んだら,今日は寝るか…」
 独り言を呟きながら、僕はブックマークをクリックした。
 たちまち現れたのは、いわゆる「おっぱい星人」の集まる掲示板。
やれ大きさがどうの、形がどうの、乳輪のサイズがどうの等という、
とても偏った内容のスレッドが、飽きることなく続いている。ハン
ドルだから真偽はわからないが、漫画家やCG作家、AVの監督見習
い等、常連の顔ぶれも多彩で、ここ半年程、僕はその一人になって
いた。
 ここの掲示板はよくできていて、ハンドルを登録しておけば、自
分の発言に対してついたレスポンスが、箇条書きに表示される。積
極的に発言する、いわゆる「アクティブ」な僕は、いろんな人から
の返事を貰う事が多く、それが嬉しくて僕もせっせと返事を書いた。
「お」
 その返事を書き進めながら、僕は一つの発言に注目した。それは
僕に一番親しくしてくれる、「バックハンド」さん。18禁ゲームソ
フトのグラフィッカーで、もちろん乳好き。
 彼(か彼女かは知らないがたぶん彼)がこの掲示板に探し物依頼
を書き込んだとき、たまたまその方面のリンクを知っていた僕が、
回答を書き込んだのがきっかけだ。それからウマが合い、お互いよ
くレスポンス発言、通称レスをつけあったりしている。
「今しがたマスターアップが終わりました〜。これ書いたら3時間
 寝て虫取り。もう4日家に帰ってません(涙)」
 いつもながら弱小ソフトハウスは大変だ。絵を描く傍らでテスト
プレイもやらされている、バックハンドさんに僕は同情した。
「前書いてました新作ですね?今度は熟女ものとか、楽しみです。
 お疲れ様でした…ってまだ仕事ですよね。頑張ってください」
 とりあえず慰めを書いておく。めちゃくちゃ忙しい筈なのに、ほ
ぼ毎日書き込んでいるのは、きっとそれでストレスを解消している
のだろう。
 送信を終えたら、接続を切って、システムを閉じる。カチンと小
さな音を立てて、ディスプレイから光が消えた。
 おやすみなさい、バックハンドさん。そして僕も。

 目が覚めたのは10時過ぎ。今の季節はよく眠れる。バイトは午後
からだから、のんびり朝食でも、と思っていたら、パンを昨日の夜
全部食べてしまったことに気がついた。冷蔵庫の中も廃墟同然。今
の住民はマヨネーズ。同居人なし。
 仕方ないから、歩いて五分ほどのコンビニに行くことにした。よ
れよれを通り越してよれ十になりそうなジーンズに足を突っ込み、
まだよれ三くらいなスニーカーにも足を突っ込む。
 鉄のドアを開けると、日差しがモロに顔を打った。眩しいよりも
痛い心地だ。
「ふあああ…ああ」
 目をしょぼつかせながら廊下を歩き始めると、
「こんにちは」
 親しげな声が右から聞こえた。
「あ、ども」
 いい加減に答え、いい加減に会釈する。それでも「彼女」は怒ら
ない。
 彼女、は隣に住む夫婦の、奥さんの方。年は知らないが、そうだ
な…「おねえさん」から「おばさん」の微妙なライン上か。ただし
胸は絶品だ。セーターやスウェットをよく着ているが、それがしっ
かり、いい形に盛り上がっている。
 巨乳なんて言葉じゃもったいない。「豊かな乳房」だ。
 会釈を終えて顔を上げる刹那、僕は彼女の胸に視線を飛ばす。今
日はちょっと色あせた、ピンクのトレーナーか。いいぞいいぞ。
 最後にちょっと目が合った。目でかすかに、彼女が笑ってくれた。

 コンビニで雑誌を読んで、購読料としてパンと牛乳を買い、ぶら
ぶら帰ってきたら、おや、僕の部屋の前に誰かいる。なんと彼女だ。
「あ、やっと帰ってきた」
 ほっとした表情で彼女が笑う。何か僕に用だろうか。
「なんでしょうか?」
 そういえば、挨拶以外に彼女と話すのは初めてだ、会ってもう半
年過ぎてるのに。
「君、パソコンとか得意?」
「え、ええ、まあ」
「でしょうね、毎晩キー叩く音が聞こえてるものね」
 バレてた。
「すいません、うるさいですか?うるさかったら」
 静かなキーボードに代えますと続く僕を制して、彼女が言った。
「ううん、いいのよ。それより、ちょっと困ってるのよ、見てくれ
 ない?」
「いいですよ、僕でわかる事なら…」
 面倒かもしれないが、とりあえず暇だし、断るのもまた面倒だ。
 彼女は頷くと、こっちだという風に手を差し出し、自分達の部屋
へ僕を案内した。
 初めてのぞく隣の部屋は、わりといい匂いがした。家庭の香り、
というやつだろうか、なんとなく懐かしい。
「ここ。主人の部屋なの」
 お邪魔します、と足を踏み入れたとたん、耳に連続したビープ音
が聞こえた。
「掃除してたら掃除機のホースが当たって…音が鳴り止まないのよ、
 壊れたのかしら…主人が帰って来る前に直りそう?」
 不安げに彼女が指差すのはパソコン。自作機らしく、いかにも安
普請な白ボディーだった。
 そのボディにくっついてる、これまた安物のキーボードの上に、
MOが何枚か、乱雑に散らばっている。なんだ、これがキーを押し続
けていたのか。
「はい、これでOK」
 それをひょいと取り上げ、コンピュータを黙らせた僕に、尊敬す
るという風の、彼女の視線が届いた。
「ありがとう…やっぱりこういうのは若い子じゃないとダメね」
 照れくさそうに彼女が笑った。
「いえ、大したことじゃないです」
 僕もなかなか照れくさい。
「本当、主人が仕事で使ってるから、壊れたら困るのよ。私はコン
 ピューターとか、全然解らなくて。興味はあるんだけど」
「簡単ですよ。今はいろいろテキストや本も出てますし」
 ウブな奥さんを前にして、軽い優越感に浸りながら、僕は答えた。
「前にやりたいって言ったら、じゃあ俺が組んでやる、って主人は
 言ったけど、パソコンって売ってるんじゃないの?」
「ああ、自分でパーツを買ってきて組み立てるんです。この、」
 と僕は沈黙するコンピュータを指差して、
「パソコンもそう。ご主人の手製だと思います」
「ふうん…」
 奥さんの眼が、興味深げに僕とコンピュータを行き来した。
「ま、まあその、わからない事があったら聞いてください。僕もま
 だまだ素人だけど」
「そう。それじゃあお願いするわね。主人は会社に泊まりこむ事が
  多くて、なかなか教えてもらえないと思うし…もちろん、お礼は
  するわよ。とりあえず今日は、ご飯でも食べていかない?」
「はい、助かります」
 持っているパンと牛乳は控えに回ってもらうことにして、僕は素
直に彼女の好意を受けた。
「コンピューターは素人でも、結構料理は得意なのよ」
 そう言う彼女が手早く作ってくれた、ポテトサラダとプレーンオ
ムレツを、僕は感謝しながらすっかり胃に納めたのだった。

 そしてそれから十日ほど経って、僕は彼女に呼ばれた。
「主人が会社から持って来たの。また今日から泊り込みよ」
 大変ね、と彼女は肩をすくめ笑った。僕も愛想に笑った。
 そういえばバックハンドさんもまた泊り込みスタートとか、掲示
版で書いてたな。新ゲームシステムのトライアルだっけ。
 ま、それは正直どうでもいいことで、僕は彼女の愛機を眺めた。
ボディは相変わらずの安普請で、うっすらヤニまでついている。つ
い昨日まで現役だったという印象だ。
「じゃあ、まず電源を入れるところから始めましょう」
「わかったわ。ええと、このスイッチね?」
 カチンと音がしてディスプレイに光が走り、ハードディスクの乾
いた作動音とともに、システムが立ち上がる画面が映し出された。
OSは少し古いが、入門には十分な機器構成のようだ…
 それから数時間、僕と彼女はマンツーマンで授業を繰り広げた。
マウスの持ち方からクリック、ドラッグやドロップ、電子メールや
ホームページの閲覧は後日にして、とにかく基本的な動作と、シス
テムのクローズや再起動までを学習した。
「ふう〜…目が回りそう。ちょっとお茶を入れてくるわね」
 そういって彼女が台所へ消えていった。僕もいい加減疲れていた
ので、大きく伸びをして、何回目かの再起動を終えたコンピュータ
を眺めた。
 職場で使われていたそのままらしい画面には、ジェット戦闘機の
壁紙が張り付いている。アイコンも画面のあちこちに散らばり、そ
の中にいくつか画像の拡張子がついたものがあった。
「…」
 ちょっと台所を見やり、彼女が出てくる気配がないのを確認する。
確認して、僕は
「一枚だけ、一枚だけ」
 と、マナー違反かもしれない「覗き見」をしようと、そのアイコ
ンをクリックした。
 驚いた。
 画面一杯に、見覚えのある、豊かな胸の女性が、無数の触手に嬲
られている画像が映し出された。目を凝らして見ると、その触手は
…修正されていない!潜り込んでいる箇所まではっきり見える。
「!」
 これは…バックハンドさんの絵だ…ま、まさか隣の人が…
「きゃ!」
 小さな悲鳴に、僕は死ぬほど驚いた。振り向くと、お盆の上に湯
のみを載せた彼女が、頬を赤くして立っていた。
「もう…何見てるのよ!」
 その声にはかすかな棘が混ざっている。僕は思い切りバツが悪く
なり、その画像を閉じた。
 部屋に嫌な沈黙が流れ、満ち溢れた。
「…主人の仕事って、そういうゲームの絵を描くことなの。裸の女
 の人が、いろいろされてるようなゲームの、ね」
 彼女が座り、溜息をついた。僕は何て答えればいいのか解らない。
「仕事が詰まると家でも描いてるし…正直恥ずかしいのよね」
 苦笑する彼女は、腕を組んでいた。そのおかげでサマーセーター
越しに胸が盛り上がり、なかなかそそる光景を見せてくれていた。
 そうか。あの胸は、奥さんがモデルだったのか…
 ほとんど瞬間的に僕は確信した。あの乳っぷりは相当のこだわり
だ。それが身近にいれば、尚更描きこめるだろう。
「…君もああいうの、興味あるの?」
 僕は素直にはいと答えた。
「そうよね…男の子ですもんね。でも、現実の女の子には興味ある?
 まさかテレビに出るように、絵でしか興奮できないなんて…」
 僕はきっぱり否定した。僕の部屋にはゲームだけではない、その
手の雑誌も置いてある。蒼目金髪でグラマーなモデルが、艶やかに
ポーズを決めているようなやつばかりだ。もちろん彼女には言えな
いが、最近多い、ただ膨張させただけのバストなんか興味はない。
自然のラインを持つ豊かな乳房が、僕は好きなのだ。その点彼女の
胸は、いい。
 僕の視線を感じたのか、彼女が身を軽くすくめた。
「…今日はもう、疲れたから終わりにしましょう。来週は水曜日に
 お願いしたいんだけど、いいかしら?都合悪い?」
「いえ、大丈夫です。じゃあ」
 僕はそそくさと立ち上がり、部屋を出て自分の根城に戻った。そ
して雑誌を開きながら、頭の中で彼女と混ぜ合わせた妄想を練りつ
つ、一時楽しんだ…
 長いようで短いような時間が過ぎ、水曜日の昼下がり、僕は再び
彼女の部屋を訪れた。
「あれから自分でも練習してみたの。どう?」
  ちょっと自慢げな彼女の手は、たしかに先週よりうんと滑らか
だった。基本動作を十分にこなせるようになったと確信した僕は、
いよいよインターネットへの接続を彼女に教えることにした。
「モデムは内蔵を使うか…じゃあ、接続の練習をしましょう」
「わかったわ。理解できてくるとなんだか楽しいものね」
 彼女は僕の横にぴったり寄り添い、好奇心を露にした顔で画面を
見つめている。マウスを動かす腕が振れるたびに、その豊かな胸が
僕の腕を軽く押し、微妙な感触を伝えてくれるのは、役得だった。
「この、おためしコース、とかでいいのかしら?」
「そうですね、最初はこれでいいでしょう」
 カチカチとマウスを触り、メモを取り、キーボードを危なっかし
く指一本で打ちながら、どうにかこうにか彼女のインターネットへ
の門は開いた。僕は、
「電話と同じで、接続してる間は電話料金がかかりますから、やり
 すぎには注意してくださいね。請求書が万単位になりますよ」
 と念を押し、かつて自分がチャットにはまって万単位の電話料金
を払うハメになったことも、小話めいて彼女に話した。
「わかったわ…さて、お茶にしましょうか。コーヒーがいい?」
「あ、コーヒーお願いします」
 颯爽と台所へ向かう彼女の背を見届けて、僕はまたルール違反を
やらかそうとしていた。今度は指もキーボードの上に置き、彼女に
は内緒だが画面きりかえ用のソフトをインストールしてある。これ
で気配を感じた瞬間、キーを押して画面を普通に装えるはずだ。
 さあて、とポインターを画像ファイルに合わせた時、僕は画面の
端に普通より少し大きめなアイコンを見つけた。「TEST」と名前が
ついているところを見ると…もしかして、新作のゲーム、かも?
 好奇心には逆らえない。僕はそれをダブルクリックした。
まずメーカーのロゴが表示され、それがすうっと消えてゆくと、い
きなり乳房を派手に揺らして身悶える、女性のアニメCGが現われ
た。
 そこから早いカット割で、乳首を執拗に転がされ…衣服の上から
揉みしだかれ…ぎりぎりと絞り上げられ…激しい挿入で揺れ動く、
乳房とその持ち主の、熟した色気が心地よい女性の映像が続いた。
 オープニングからこれか…気合入ってるなー。これ、絶対買おう!
と、バックハンドさんのいい仕事に感服した僕は、背後への気配り
を完全に忘れていた。
「何、見てるのかしら、ボク?」

 時間が凍った。

 振り向けない僕の耳元に、暖かい気配がした。画面の中では、リ
ピートの始まったデモムービーが、さっき見た映像を流している。
「ほんとに好きね、君…」
 気のせいか?その声には咎めるような響きはない。
「…」
 僕はまだ、身体を硬くしていた。マウスを持つ手も、動かない。
「これ、ね」
 と彼女は画面の中でゆさゆさ揺れる胸を指差した。
「モデル、私なの…バカみたいだったわよ、裸になって、同じポー
 ズして…胸の揺れ方をビデオに撮って研究したの」
 たちまち、僕の脳にその映像が、フルカラー、声つき、効果音つ
きで浮かんだ。ズボンの下で勃起が始まった。
 ヤバい。
 心臓が加速して、手にじっとりと汗が浮かんだ。彼女も動かない
まま、僕たちは無音のムービーを見続けていた。
 それが終わり、三回目のメーカーロゴが出た時。
 ぐっと彼女が動き、その胸をあからさまに僕に押し付けてきた。
心地よい感触が僕に来た。
「…ゲームじゃなくて…本物を、見たい…?」
「はい」
 ためらわず僕は答えた。迷ってなんかいられない。見たいといっ
たら見たいのだ、絶対に。
「胸だけよ。誰にも言わないって、誓えるなら」
「誓います」
 そんなもので済むなら、百万回でも誓ってみせる。僕は決然と答
えた。

 彼女が立ち上がり、部屋着の裾をまくった。あまり華麗ではない、
白いブラジャーが見え、フロントホックらしいそれを、彼女の指が
解いた。
「…ふふ」
 穴が開きそうにそこを見つめている僕の視線に、彼女は恥ずかし
気に笑った。掌で隠していた部分を、そっとずらしてゆき…
 まだ十分にピンク色した乳首と、その周辺が見えた。
 僕は唾を飲んだ。礼儀正しく正座して、彼女の乳房を拝んだ。ズ
ボンの中では鈍い痛みが駆け回っていたが、ここで獣になって、彼
女のご機嫌を損ねたくはなかった。
 本当にいい胸だ…バックハンドさんは幸せ者だ。
 その鑑賞会は数分も続いたろうか。しびれを切らしたのは彼女の
方だった。
「ちょっとだけなら…触っても、いいわよ」
 お許しが出たので、僕は手を伸ばした。間違っても痛くしないよ
うに、ありったけの慎重さで、触れる。
 それは暖かく、柔らかく、でも乳首はこりこりと硬かった。左の
掌でカップを作るようにして、彼女の右の乳房を覆い、僕はゆっく
りとリズムをつけて、揉みしだきはじめた。
「あ…」
 そこまで許す気はなかったのかもしれないが、愛撫を始めた僕の
手が、彼女から甘い呼吸を引き出した。
 僕は神経を左手に集中し、乳房を愛した。すっかり硬くなった乳
首の感触を心地よく思いながら、指の間にそれを挟んで、くいくい
と弄んだりした。
 彼女の呼吸が速くなる。頬がうっすら紅くなる。感じてくれて、
いるらしい。僕は我慢ができなくなって、遂に右手も参加させた。
「ん…は、あ…」
 はっきりと彼女が声を上げ、目を薄く閉じて、快感を訴える。僕
はその顔がたまらなく好きになって、なお一層愛撫を重ねる。
 揉みしだきから、僕は乳首へ攻撃を集中させた。指でつまみ、転
がし、親指でくいっと軽く弾く。その度に彼女は甘い息を吐き、切
なげに身体をよじるのだった。彼女の両手はだらんと垂れて、僕が
一方的に愛撫する形だったが、それの何が不満だろう…!
 僕はこれでもかこれでもか、と乳首を責めた。バックハンドさん
が絵を描く、ゲームそのままに、愛撫を繰り返していった。
「ね、ねえ…もっと、他の事も…してみたく、ない?」
 危うくいいえと僕は答えるところだった。彼女が望むなら、何で
もお付き合いしよう。僕は精一杯のウブさを装った。
「はい…何、するんですか?」
「横になって…力を抜いて」
 僕はそそくさと床に寝て、彼女のする事を待ち構えた。既に僕の
ペニスはぎりぎりと勃起して、ズボンの前が痛いほど突っ張ってい
たから、それが晒されたのは、正直恥ずかしかった。
「ゲームの女の子じゃ、こんな事してくれないでしょう?」
 優越感を抱いてるような声で、彼女が僕に覆い被さってきた。頬
を撫で、シャツ越しに身体をさすり…ズボンの突っ張りを優しく掴
み、丁寧に揉み始める。
「とっても熱いわね…」
 ゲームさながらの淫靡さで、彼女が呟く。もしかしたら彼女は、
声優もやってるのかもしれないなと、気持ちよさの中で僕は考えた。
「こういう事も、してあげる」
 せっせと彼女の手が動き、ズボンのジッパーを開いた。ブリーフ
の合わせ目にも手を入れ、そこから僕のペニスをつかみ出すと、今
度は自分の乳房をそこへ寄せた…お、おお!?
「ほ…うら…気持ち、いいでしょ?」
 こ、これが本物のパイズリか、とどもって感激するほど、実は強
い快感はなかった。ただ、暖かい乳房に挟まれて、それをこすりつ
けられるのは、精神的に相当心地よかった。
「うくっ…」
 その快感に油断したのか、僕の中で射精の欲求が一気にふくれ上
がった。それを敏感に察した彼女は、
「待って…まだよ。我慢して」
 言いながら一度手を離して、身体も離し、テーブルの上にあった
ティッシュの箱を持ってきた。そこからガサガサと何枚かの紙を引
きぬくと、僕のペニスに被せ、
「いいわよ。出しちゃいなさい」
 ちょっとせっかちにしごきをくれたから、僕は抵抗もせずに、精
液を解放してやった…。

 その日はそれで終わり。首尾よく彼女とセックスできたのは、次
の水曜日だった。バックハンドさんはゲームが完成して、スタッフ
と打ち上げ旅行に出かけたそうだ。
 帰ってきたら、もう次の仕事だという。彼女はほとんど未亡人の
ように、その身体を火照らせていた、というわけだ。
「ウィンドウズのゲームに関わって、ウィドウなんですね」
 と洒落めかして聞いたが、ウケなかった。くそ。
 悔しいから、僕は童貞を卒業すると、二回戦で思い切り彼女を突
きあげてやった。正常位では一分もたなかった僕は、バックで主導
権を握って、強弱を自分で考えながら、熟して熱く潤み、僕を飲み
こんで嬉しそうな、彼女の中へ激しく出入りした。
「あっ、ああ…は、んふ…いいわ、上手…よ…」
 お褒めの言葉を呟きながら、腰を振って彼女が喘ぐ。アップにし
た髪が、ざわざわと揺れて、そこから垣間見えるうなじが、何とも
色っぽい。更に視線を落とすと、はだけたブラウスの間にそびえる、
豊かな乳房も見えた。肉の締めつけも強くリズミカルになり、僕と
彼女をどんどん高みに導いてゆく…
「も、もう…!」
 僕が呻く。彼女が喘ぐ。
「い、いいわ!中に出して…っ、は、ああっ…!」
 瞼の裏に、白くひらめいた光が見えた瞬間、僕は爆発し、二度目
の射精を彼女の中に、勢い良く、開始した…

 …と、いうシナリオを書いてみた。もう少し推敲して、明後日の
会議に出してみよう。人妻筆下ろしネタは古典的だが、これに乳房
描写が加われば、レーベルの基準は満たせるし、いいんじゃないか
な、と私は自画自賛して、パソコンの電源を落とした。そしてこの
シナリオに組ませたい絵の、まだ鉛筆で荒く引いた線が載っている
ケント紙を、汚さないように注意して片付けた。
 まったく、絵描きからもシナリオ公募か。段々キツくなるなあ。

 私は椅子から立ち上がり、大きく伸びをして息を吐いた。軽く軋
む首をひねりながら、これからの楽しい時間を考えることにする。
 まずシャワーを浴びて、冷たいビールを一杯やって…それからは、
もう言うまでもない。妻も待ちわびているはずだ。
 隣の部屋には妻がいる。普段は貞淑で、料理が上手く、そして…
抱けば良い声で、麗しい乳房を揺らし悶える、私の妻が。

 そう。私にとって、お楽しみはこれからなのだ。

*END*

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